つわり備忘録

妊娠して、出産しました。書くとそれだけのことなのに、本当に色んな気持ちになった約一年でした。

つわりの症状

5週~11週  つわり第一波期

私はつわりが非常に重いタイプでした。つわりの辛さは想像を絶していました。今まで生きてきた中で一番つらかった3ヶ月間でした。

妊娠検査薬で妊娠がわかった前後から耐えられない眠気がありました。その後、産婦人科で妊娠が確定した直後から、いきなりきつい吐き気に襲われました。もういまにも吐く直前、みたいな気持ちの悪さがあるけれど、なかなか吐けない。いきなり気持ち悪さマックスで、ベッドから起き上がれなくなり、仕事を休みました。

つわりには色んな種類があると言われていて、ニオイづわり、吐きづわり、食べづわり、よだれづわりなど。なんとなくこれのどれかになるようなイメージでいたけれど、私は日替わりで毎日いろんな症状が出ました。

一番きつかったのはニオイ。ドラマとかで、ある日ご飯がたけた直後の炊飯器を開けて「うっ」となりトイレに駆け込むシーンがありますけど、私の場合、特定のなにかのニオイがだめになるのではなく、すべてのニオイがボリューム500倍になって襲ってくる感じで、全て吐き気を催すわけです。

ベッドがある部屋から出られなくなり、トイレはどうしようもないから行くしかないのですが、寝室からトイレに行くためにはキッチンのある居間を通って、階段をのぼらねばならないのです。寝室で大きく息を吸ったあと息を止めてそのまま走ってトイレに駆け込んでいました。その間に少しでも他のニオイを吸おうものなら、たちまち吐き気に襲われ吐いてしまうのです。毎回、トイレに行くのが恐怖でした。

そんな状態だったので、お風呂もシャワーも毎日はできませんでした。お風呂場はニオイのするものがごっそりあるからです。ほんのちょっとでも調子が良いときに隙を見てシャワーしていましたが、ひどいときは1週間に1度入れればいいレベルでした。そんな状態だと、垢がめっちゃ溜まって石鹸で洗っても洗っても落ちなくなって、体が全身油の膜で覆われているようで、ずっと不快でした。

 

ニオイが要因で吐くというのだけではなくて、吐きづわりもひどく、胃に入っているものは全て吐くし、胃に入っていないときも胃液を吐き(酸っぱい)、胆汁を吐き(苦い)、吐きすぎて喉がおかしくなって、吐くものに血が混じって来たときは流石に命の危険を感じました。

 

一日中ベッドに横になっているなら、スマホでネットフリックスでも見てればいいじゃんって思うじゃないですか。しかし、スマホ見れないのです。動画を見るだけで酔って具合悪くなる。画面を眺めていられない。漫画も読めないし、活字も追えない。音楽もラジオもポッドキャストも全く聞く気になれなくて、何もできず、ひたすら暗い寝室で横になっているしかなくて、一日が途方もなく長く感じました。一番つらかったのは夜です。昼間寝ている分、夜まとまった時間眠れなくて、夜中に目が覚めてしまうとなかなか寝付けず夜が長くて、夜が来るのが本当に怖かったです。

最後の方は、毎日5,6回以上吐くようになって、食べ物はおろか、飲み物を飲んでも吐くようになってしまい、ほんとに死ぬんじゃないかって怖くなって、病院に電話したら「すぐ来て点滴しろ」と言われて、点滴を受けた事もありました。体重は8キロ減り、ケトン体もプラスになり、妊娠悪阻と診断されました。(妊娠は病気ではないですが、妊娠悪阻はれっきとした病気だそうです)

12~14週 ほんのり調子良くなる

ほんのり調子良くなり、1ヶ月半ぶりに料理もできるようになり、少しずつ食べられるようになって来た時期。2日に一回は吐いていました。仕事も復帰、なかなか一日椅子に座っていることもできない状態でしたが、なんとか在宅で仕事をしていました。

15~18週 つわり第二波

仕事を再開して知らず知らず疲れが溜まっていっていたのか、一旦良くなったと思った症状がどんどん悪くなり、また水も飲めないような症状がではじめました。食べるけれど直後に吐く、仕事以外のことはほとんど何もできないようになってしまい、病院に電話して2度目の点滴を受けました。

それから徐々に徐々に回復し、普通に仕事が8時間できるようになったのは6ヶ月(20週)を超えたあたりだったと思います。

仕事とつわりと自尊心

とても仕事などできる状態ではなく、最初の一ヶ月は欠勤、次の一ヶ月は妊娠悪阻の母健カード(診断書みたいなもの)を書いてもらって休職しました。今から考えると、本当に毎日これまでに感じたことのないような辛さだったにも関わらず、仕事ができない自分は甘えているんじゃないのか、とか、他の妊婦さんは働いているのに、とか、そういうことをよく考えて暗い気持ちになっていました。

職場で妊娠初期にそんなに長く休んでいる人を認識したことがなかったし、みんな普通に働いているように見えたから、妊娠したって仕事は普通にできると思い込んでいたんですね。(つわりは妊娠初期の症状だから、そもそも辛くてもおおっぴらにできないから周りの人は認識できないのは当然のことでしょう、今考えれば)仕事はもちろん、殆どの生活が全てできなくなり、ベッドの上でただただ横になっている日々は自尊心をガンガン削っていきました。

急に変わって全くコントロールの効かない体の調子、いつ終わるかわからない気分の悪さ、どんどん弱気になっていました。最初の頃はよく泣いていたけれど、途中から涙も出なくなってきて、とにかく、無、本当にただただ時間がすぎるのを待っているだけでした。自分が自分じゃないみたいで本当に辛かったです。

2ヶ月はほとんど寝たきりで、体重もみるみる減っていったので、体力もなくなって、近くのコンビニに行くこともできなくなり、体力がそこそこになるまで2ヶ月以上かかりました。妊娠後期には犬の散歩に毎日行けるまでに回復しましたが、体力がないと仕事もそれ以外のこともできなくなってしまうので、それも自己肯定感を爆下げ舌要因になりました。

つわりと夫

夫は本当に一生懸命寄り添ってくれました。何か食べたいといえば暑い中一日に何度も何度もコンビニに買いに行ってくれましたし、今まで剥いたことのない梨を切って持ってきてくれたり、トマトを切ってタッパーに入れて冷蔵庫にいれておいてくれたりしました。本当に尊敬したのは、私の吐いたものの処理をホイホイといつもやってくれていたことでした。気持ち悪かっただろうに、夫には一生頭が上がらないな、と思いました。

夜、辛いときには何度も「もう妊娠をやめたい、死にたい」とこぼしていたのですが、夫は毎日うんうんと聞いてくれ、毎日肩と背中、両足のマッサージをしてくれるようになりました。つわりで心身ともに本当に辛いとき、寝る前のマッサージは私の心のほとんど唯一の支えでした。寝る前のマッサージはその後出産前まで私達夫婦の日課になり、妊娠期間中を支え続けてくれました。

妊娠は病気じゃないけどさ

妊娠もつわりも病気ではありません。病気ではないからこそなのか、病気のように研究は進んでおらず、確実に楽になる薬も存在しません。しかも、個人差が大きく、全くつわりもない人もいれば、生まれるまでひどい状況が続く人もいます。つわりだけでなく、切迫流産や切迫早産で長期入院する人もいます。

そういった目立った症状がなくても、疲れやすくなり、ホルモンのせいで精神的に不安定になりますし、体もどんどん変わっていくことに戸惑います。子育ては誰か変わってくれるし協力もしてもらえるけれど、妊娠は誰も代わってくれないんですよね。自分の食べたもの、したこと、精神状態がダイレクトに腹の子の成長に関わってくるというプレッシャーは想像を遥かに超えていました。それに加えて、酒、なまもの(生魚全般、生の魚卵、ローストビーフやユッケ等の生肉)、ナチュラルチーズ等々の食事の制限も地味にストレスでした。加えてこのコロナ禍。本当に孤独で辛い妊娠生活でした。なんか、妊婦さんってゆったりのんびり、お腹をなでながら子供の未来に思いを馳せて、幸せいっぱいってイメージでしたけど、こんな修羅ランドだとはホント思わなかったです。