髪を染めたら、2ヶ月で昇進した話

今の会社に入って8ヶ月になります。最初はアシスタントエンジニアという肩書きで入ったのですが、入社して約3ヶ月で、“アシスタント"をとり、昇進してエンジニアとして働くことになりました。今日はその話をしようと思います。

 

私はこれまで農業系のコンサルタントとしてしばらく働いたのち、今の画像系を分析解析するスタートアップに転職しました。前職を辞めた後修士課程でプログラミングを含む画像解析を専攻したのですが、実務経験がなく、面接の時に「アシスタントエンジニアというタイトルで」と言われ、実務経験がないのに雇ってもらえるの、よかったーと思って、二つ返事で働くことを決めました。

入ってから、同僚外国籍エンジニアに言われて衝撃をうけたのが、「なんでアシスタントエンジニアなんかに甘んじているの?」という言葉でした。同僚はなぜ専門分野の修士号を2つ持つ私がアシスタントエンジニアとして採用されたのか不思議に感じていたようでした。私はそれに「開発経験もないし、知識もまだ少ないし、そもそもジョブディスクリプションの要件に達してなかったからかな」と答えたのですが、「スタートアップなんだから、みんなこの仕事に経験ないの当然でしょ」と言われてしまいました。私はなんだか恥ずかしいような、しょんぼりするような気持ちになり「私、自信ないんだよね…」と答えてその話は終わりました。

 

この話をしてから、心がザワザワして、目が覚めたような感じになりました。それまで、いかに”アシスタントとして”仕事をするかを考えていた自分に気づいて、それではいかん、と。肩書がアシスタントだと、周りは私にアシスタントとしての仕事を振ってきます。このまま自分の自己評価がアシスタントのままだといつになっても、アシスタントとしての経験しか積めないのではないか、と思ったのです。一刻も早くこの”アシスタント”に横棒を引いてさっさと消してやろう、と心に決めました。

そう心に決めたあと、私は「良い子ちゃんからは卒業しなければならない、不良になるのだ」と思い、すぐさま美容室の予約を取りました。これまでほとんど髪を染めたこともなく、できるだけ目立たず、女度を下げて、ド真面目に見られるような髪型ばかりだった私。日本企業で役所相手の仕事をしていたので、派手に髪を染めるのはNGだったんです。でも、ほとんどお客さんとも会わない仕事になって、フルリモートだし、どんな髪型でも文句を言われたりはしなくなったので、自分への約束のために、今までで一番派手な髪にしようと思いました。

オーダーしたのはインナーカラー、はっきりと入れていると分かるようにかなり明るい色をオーダーしました。インナーカラーなら、いつもはひとつ結びにしているので、変化はあまり他の人にはわからないし、万が一客先に出ることがあってもごまかせる、ということで。美容室の人には、「遅く来た反抗期って感じにしてください」と言ったら、はいよ!とブリーチも2回してくれて、好みの色に仕上げてもらいました。初めてその店に行ったのに、思い切ってきっちりと不良風にしてくれたのはありがたかった。たいがい、初めて行く美容室って、思い切った髪型にはしてくれないんですよね…。

 

それから、私は仕事でちょっと怖気づいたり、もじもじしたりするたび、インナーカラーを思い出し、「私は従順なだけの女じゃないぜ」と思い、意見を言ったりコミュニケーションを積極的に取ったり、新しい提案を書き、資料を作り、成果を出すようにしました。周りから見れば取るに足らないような変化で、しかもリモートだから誰にもはっきりと見えないように髪の毛の色を変えただけだったのですが、私にとっては自分を変える象徴のようなもので、実際にとてもうまく機能しました。

 

4半期ごとに行われる上司との振り返りの時に、私は思い切って上司に「あの、肩書をアシスタントエンジニアからエンジニアにするためには、何が必要でしょうか。どういうことをクリアすればエンジニアと名乗って良いですか?」と素直に訊ねました。上司は面談のあと少し時間をおいて、「あなたはすでにアシスタント以上のことをしているので、うちの部署としてはあなたのタイトルからアシスタントを取ってエンジニアと名乗ってもらっていいと考えている。部門長たちとも話をするので正式にはもう少し待ってほしいけれど、私達はあなたを評価しています」と丁寧に応えてくれました。その話があった数週間後、正式に「タイトルは自分で好きに決めてええで!」え!そんな感じ?軽!と驚きましたが、実質上の昇進にとてもうれしくなりました。

 

これまで仕事をする中でそんなふうにはっきりと何を目指したら良いのかを上司に聞いたことはありませんでした。そんなふうに訊ねるべきではないと思っていたからです。そういうことは全て自分で考えて目標を立てて、達成するものだと漠然と考えていました。でも、自分の考えた方向と部署や会社の目指している方向とがうまく噛み合っていなかったのでしょうね。評価も上がらなかったし、評価が上がらないことで、目指すべき方向がよく定まらず、成果が上がらないと言うループにハマってしまっていました。きっと上司も私がどうなりたいのか本音のところがわからず、どう指導していいものかわからず、その場で上司が思いついたようなぼんやりしたことしか言えなかったんだろうなあ。信頼関係を築く努力すらなんにもしていなかったんだなあ、と改めて思いました。 

 

実は今日も美容室に行ってきました。最近体の調子が悪かったのもあって、気分がとても落ち込んでいて、次の4半期面談が始まる時期でもあるし、気分転換しようと思い、肩下まであった髪をバッサリショートに切ってきました。前回のカラーも少し残って結構かっこいい感じになりました。今回髪型を変えたのはまた前回とはちょっと違う意味だったのですが、美容師さんと話しながら「今度はピンクに染めようかなあ」とか話をして、とても楽しくリフレッシュすることができました。髪はいつも自分の目につくパーツだし、自分をコントロールするために使うことができるんだなあ、と改めて思いました。

 

またねー